無痛分娩は、出産時の痛みを和らげる方法として近年選ぶ方が増えています。
しかし、すべての妊婦さんが受けられるわけではありません。
体質や既往歴、分娩の進み方によっては無痛分娩が難しいケースもあるのです。
この記事では、無痛分娩ができない人の特徴について詳しく解説しています。
無痛分娩が適している人の特徴や無痛分娩を選ぶメリットなどもまとめているため、自分に合った出産方法を探している方はぜひ参考にしてみてください。
無痛分娩ができない人の特徴
無痛分娩は出産時の痛みを和らげる方法として選ばれていますが、すべての妊婦さんが利用できるわけではありません。
体質や分娩の進み方によっては、麻酔が十分に効かない、あるいは安全性が確保できないために実施できない場合があります。
具体的には以下に当てはまるケースです。
- 分娩の進みが早い人
- 麻酔薬でアレルギーを起こしたことがある人
- 肥満体型の人
- 血液が固まりにくい人
- 背骨が曲がっている・背骨の手術をしたことがある人
- 注射する部位に膿や発熱がみられる人
ここでは上記6つの特徴についてそれぞれ解説します。
分娩の進みが早い人
お産の進みが早い人は、無痛分娩が間に合わない可能性があります。
無痛分娩に用いられる硬膜外麻酔は、背中に細い管を入れ、そこから麻酔薬を注入していく仕組みです。
この処置にはモニター装着や薬剤の準備を含めて30分程度かかり、さらに投与後も10〜15分ほど経ってから効果が出始めます。
そのため、陣痛が始まってから出産までが非常に短時間で進む人の場合、麻酔が効き始める前に赤ちゃんが生まれてしまうことがあります。
特に経産婦さんは出産がスムーズに進みやすいため、希望していても無痛分娩ができないことがあるのです。
麻酔薬でアレルギーを起こしたことがある人
過去に麻酔薬でアレルギーを経験した人は、無痛分娩を選択できない場合があります。
麻酔薬に反応すると、蕁麻疹や喘息のような症状が出て、母体と胎児に危険が及ぶ可能性があるためです。
特に強いアレルギー反応が起きた場合には、麻酔の投与を中止し、直ちにアレルギーに対する治療を行わなければなりません。
ただし、症状の内容や使用薬剤の種類によっては、別の麻酔方法で対応できる場合もあります。
そのため、過去に麻酔で異常があった場合は必ず医師に伝えて相談することが大切です。
肥満体型の人
肥満体型の人も無痛分娩が難しい場合があります。
無痛分娩で一般的に使われる硬膜外麻酔は、背骨と背骨の間に針を刺す必要がありますが、皮下脂肪が多いと背骨の位置を確認しにくくなり処置が難しくなるのです。
無理に針を刺すと神経を傷つけるリスクもあるため、安全のために断られることがあります。
特に体重が80kgを超える場合や妊娠中に急激に体重が増えた場合に問題となりやすいです。
ただし、体重だけで判断されるわけではなく、実際に背骨を確認できるかどうかも基準となります。
無痛分娩を希望する場合は早めに医師へ相談し、自分の体型で実施可能かどうかを確認しておきましょう。
血液が固まりにくい人
血液が固まりにくい人は、無痛分娩を受けられない場合があります。
これは、硬膜外麻酔の処置中に出血が起きた際、血が止まりにくくなることで合併症を起こすリスクが高まるためです。
特に抗凝固薬や抗血小板薬といった血液をサラサラにする薬を服用している人は注意が必要です。
背骨の近くに血の塊(血腫)ができてしまうと、神経を圧迫してしびれや麻痺につながる恐れもあります。
ほとんどの医療機関では、無痛分娩の前に血液の凝固機能を確認する検査を行います。
過去に血が止まりにくいと指摘されたことがある人や、持病で薬を服用している人は、必ず妊娠中に医師へ伝えることが大切です。
背骨が曲がっている・背骨の手術をしたことがある人
背骨に側弯症などの変形がある人や、ヘルニアや骨折で手術を受けて金具を入れている人は、無痛分娩が難しくなることがあります。
無痛分娩では硬膜外腔と呼ばれる背骨の隙間に細い管を通して麻酔薬を投与しますが、背骨の構造が通常と異なる場合は管を入れる位置がわかりにくく、処置が難しくなるためです。
ただし、背骨の状態や手術の内容によっては対応できる医療機関もあります。
希望する場合は事前に自分の病歴や背骨の状態を伝え、実施可能か確認しておきましょう。
注射する部位に膿や発熱がみられる人
無痛分娩に用いる硬膜外麻酔は、背中に針を刺して管を入れる処置が必要です。
そのため注射をする部分に膿がたまっている場合や皮膚の炎症がある場合には、感染が広がる危険があるため実施できないことがあるのです。
また、発熱していると体内で感染が起きている可能性があり、その状態で麻酔をすると髄膜炎など重大な合併症を起こすリスクがあります。
背骨の周囲は本来無菌状態であるため、少しでも感染の疑いがある場合は処置を控えるのが安全です。
熱があるときや注射部位に違和感がある場合には、必ず医師に報告し、無理に無痛分娩を進めないことが大切です。
無痛分娩が適している人の特徴
無痛分娩が適している人の特徴として、以下の4つが挙げられます。
- 陣痛に対するストレスや不安が強い人
- 高血圧の人
- 分娩が進まず体力を消耗している人
- 緊急帝王切開術になる可能性がある人
ここでは上記4つの特徴についてそれぞれ解説します。
陣痛に対するストレスや不安が強い人
陣痛に対するストレスや不安が強い人には無痛分娩が適しています。
出産の痛みは誰にとっても大きな負担となる要素ですが、特に不安が強い人にとっては精神的ストレスが大きな問題となります。
過去のお産で強い痛みを経験してトラウマを抱えている方や、パニック障害などの心の病気がある方は、陣痛が強い恐怖心につながることもあります。
また「自分は痛みに弱いから耐えられないのでは」と妊娠中から心配し続ける人も少なくありません。
無痛分娩を選択することでこうした不安を和らげ、より落ち着いた気持ちで出産に臨めます。
高血圧の人
無痛分娩は高血圧の人にも適しています。
妊娠中に高血圧がある方や妊娠高血圧症候群と診断された方は、陣痛時の痛みによる血圧上昇がリスクになります。
強い痛みは血圧を急激に高め、けいれんや脳出血などの合併症を引き起こす恐れがあるため注意が必要です。
お産中に高血圧状態になると、経腟分娩を断念し、帝王切開に切り替えるケースも珍しくありません。
無痛分娩は痛みを和らげながら血圧の急上昇を防ぎ、母体の安全を守るだけでなく、胎児への血流を安定させる効果も期待できます。
血圧のコントロールが難しい方でも、無痛分娩を選ぶことで経腟分娩を目指せる可能性が高まるのです。
分娩が進まず体力を消耗している人
分娩が進まず体力を消耗している人にも、無痛分娩が適しています。
お産は通常でも体力を大きく消耗しますが、分娩がなかなか進まず長時間に及ぶ場合には、母体が極度に疲れてしまうことがあります。
陣痛に長く耐えることで力を使い果たし、いざ赤ちゃんを出す段階でいきむ体力が残っていないケースもあります。
その結果、陣痛が弱まりさらに分娩が長引く、あるいは緊急帝王切開が必要になることもあるのです。
こうしたときに無痛分娩を行うことで、体力の消耗を抑え、分娩を継続できる場合があります。
母体の疲労を減らし、経腟分娩を成功させやすくする点で有効な選択肢です。
緊急帝王切開術になる可能性がある人
逆子や双子の妊娠など、出産途中で帝王切開へ切り替わる可能性がある人には、無痛分娩が適しています。
無痛分娩ではすでに麻酔チューブが入っているため、緊急時には薬を追加するだけで10分程度で手術に移れるメリットがあります。
一方、自然分娩中に麻酔を一から準備する場合はその分時間がかかり、赤ちゃんや母体にリスクが生じることもあります。
出産は予測できないトラブルが起こることもあるため、帝王切開の可能性が高い人は、スムーズに切り替えられる無痛分娩を検討することをおすすめします。
無痛分娩を選ぶメリット
無痛分娩を選ぶメリットとして、以下の5つが挙げられます。
- 痛みを抑えられる
- 体力を温存できる
- 出産にかかる負担を軽減できる
- 赤ちゃんにかかる負担を軽減できる
- 血圧の上昇を抑えられる
ここでは上記5つのメリットについてそれぞれ解説します。
痛みを抑えられる
無痛分娩の大きなメリットは、出産時の強い痛みを軽減できることです。
陣痛は「骨折の何倍もの痛み」と例えられるほど強烈ですが、麻酔を使うことでその痛みを和らげられます。
完全に無痛にするわけではなく、いきむ力を残すためにある程度の感覚は残されますが、耐え難い痛みによる恐怖やストレスは大きく減少します。
痛みを和らげることで落ち着いて出産に臨むことができ、精神的な安心感にもつながるでしょう。
痛みに弱いと感じている人や、過去の出産でトラウマを抱えている人に特におすすめの出産方法です。
体力を温存できる
出産は数時間から長ければ数十時間に及ぶこともあり、大きな体力を必要とします。
強い痛みに耐え続けること自体が消耗につながるため、分娩の後半でいきむ力が残っていないケースもあります。
無痛分娩を選ぶと、痛みによる体力の浪費を防ぐことができ、分娩の終盤で必要な体力を温存することが可能です。
体力が残っていれば、出産直後に赤ちゃんを抱いたり授乳したりするのもスムーズになります。
特に上の子がいる経産婦の場合、出産後すぐに子育てに戻る必要があるため、体力を温存できる点は大きなメリットとなるでしょう。
出産にかかる負担を軽減できる
無痛分娩は出産にかかる負担を軽減できる方法です。
特に初産の方は、経産婦と比べて分娩時間が長引きやすく、その分疲労も大きくなります。
無痛分娩を選択することで、痛みと長時間の疲労による心身の負担を和らげ、よりリラックスした状態で出産を進められます。
結果として、分娩がスムーズに進み、産後の回復も早まりやすくなるのです。
赤ちゃんにかかる負担を軽減できる
陣痛や強いいきみの最中は、母体から赤ちゃんへ送られる血流が一時的に減少するといわれています。
そのため、赤ちゃんに十分な酸素が届かず負担となることがあるのです。
無痛分娩にすることで母体の緊張が和らぎ、血流が安定し、赤ちゃんへの酸素や栄養の供給が保たれやすくなります。
血圧の上昇を抑えられる
陣痛や出産の痛みは血圧を大きく上げる原因になります。
特に妊娠高血圧症候群の人は、急な血圧上昇がけいれんや脳出血といった合併症につながるリスクがあり危険です。
無痛分娩は痛みを和らげることで血圧の急上昇を防ぎ、母体を守る効果が期待できます。
さらに、血圧の上昇が抑えられることで赤ちゃんへの血流も安定しやすくなります。
持病で血圧が高めの人や、妊娠中に高血圧と診断された人には特にメリットが大きい方法といえます。
無痛分娩に関するよくある質問
無痛分娩に関するよくある質問をまとめました。
- 無痛分娩は全く痛みがない?
- 無痛分娩に使用する麻酔は赤ちゃんに影響する?
- 無痛分娩ができない場合の選択肢は?
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
無痛分娩は全く痛みがない?
無痛分娩という名前から「全く痛みを感じない」と思う方もいますが、実際には完全に無痛になるわけではありません。
硬膜外麻酔は痛みを大きく和らげますが、いきむ力を残すためにある程度の感覚を残すよう調整されます。
もし完全に下半身の感覚をなくしてしまうと、陣痛に合わせていきむことが難しくなり、分娩が長引く可能性があるためです。
そのため「痛みを大幅に軽減しながら、出産に必要な感覚は残す」というのが基本的な考え方です。
無痛分娩に使用する麻酔は赤ちゃんに影響する?
無痛分娩に使われる麻酔は、背骨の周囲にある硬膜外腔に注入されるもので、直接血管に大量に入るわけではありません。
血中に取り込まれる麻酔成分はごくわずかであり、そこから胎盤を通じて赤ちゃんに届く量はさらに少ないとされています。
もちろん個人差はあるため、過去に薬へのアレルギーがあった方や持病を持つ方は必ず医師に伝える必要がありますが、一般的には赤ちゃんへのリスクは非常に少ないといえるでしょう。
無痛分娩ができない場合の選択肢は?
無痛分娩を希望しても、体質や合併症、分娩の進み方によっては麻酔を使えない場合があります。
その場合でも、より自然にリラックスして出産できる方法がいくつかあります。
例えば、上半身を起こした姿勢で重力を利用する『座位分娩』や、温水の中でリラックスして出産できる『水中分娩』などです。
また、医療機関によってはフリースタイル分娩を取り入れているところもあり、自分に合った方法を選ぶことができます。
ただしこれらは施設によって対応の可否が異なり、感染リスクなどの注意点もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
まとめ
血液が固まりにくい人や背骨に手術歴がある人、感染や発熱がある人などは、母体と赤ちゃんの安全を守るために無痛分娩ができない場合があります。
また、分娩が急速に進むケースや肥満体型の影響で処置が難しいケースもあります。
無痛分娩を検討する際には、自分の体の状態や既往歴を正直に医師へ伝え、適切な判断を仰ぐことが大切です。
関谷レディースクリニックでは、無痛分娩による出産に対応しています。
自然陣痛発来での無痛分娩や計画無痛分娩など、一人ひとりに合った無痛分娩をご提案しているため、出産方法でお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。



