「無痛分娩は初産だとできない」と耳にしたことがある方もいるかもしれません。
しかし実際には、初産婦でも無痛分娩は可能です。
ただし、分娩の進み方や体の状態によっては対応が難しい場合もあります。
この記事では、「無痛分娩は初産だとできない」と言われる理由について詳しく解説します。
無痛分娩ができないケースや注意点、メリットなどもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
無痛分娩は初産だとできない場合がある
無痛分娩は初産婦でも受けられることがありますが、医療機関によっては経産婦のみを対象としているところもあります。
これは、初産婦では分娩の進行が予測しづらく、計画出産が思い通りに進まない可能性があるためです。
具体的な理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 陣痛促進剤を使用しても陣痛が起きないことがあるため
- 経産婦よりも出産に時間がかかることがあるため
- 計画出産が計画通りに進まないことがあるため
ここでは上記3つの理由についてそれぞれ解説します。
陣痛促進剤を使用しても陣痛が起きないことがあるため
初産婦の場合、陣痛促進剤を投与してもスムーズに分娩へとつながらないことがあります。
子宮口の開きが十分でない、または子宮の反応が弱いなどの理由から、予定通り陣痛が起こらないケースも少なくありません。
その結果、無痛分娩を計画していても薬の効果が出にくく、分娩が進まない場合は投薬を中止することもあります。
さらに、本格的な陣痛に至らない場合には、最終的に帝王切開へ切り替える判断が必要になるケースもあります。
このようなリスクを考慮し、一部の医療機関では初産婦への無痛分娩を制限しているのです。
経産婦よりも出産に時間がかかることが多いため
初産婦は一般的に分娩時間が長くなる傾向があります。
これは、子宮口が開くスピードや産道を赤ちゃんが通過するまでの時間に違いがあるためです。
経産婦は一度出産を経験しているため、身体が出産の流れを覚えており、比較的スムーズに進むことが多いのに対し、初産婦では進行が遅れることがあります。
無痛分娩は麻酔を使用するため、陣痛の感覚が弱まり、いきむタイミングがつかみにくいという特徴もあります。
こうした条件が重なることで分娩が長引く可能性があり、医療機関によっては経産婦を優先する体制をとる場合があるのです。
計画出産が計画通りに進まないことがあるため
無痛分娩は事前に日程を決めて行う計画出産で行われることが多いですが、初産婦ではその計画が順調に進まない場合があります。
陣痛が予定通りに始まらなかったり、子宮口の開きが不十分で処置を追加する必要があったりと、想定外の展開になることが少なくありません。
結果として出産日が延びたり、帝王切開に切り替えることもあります。
そのため、医療機関によっては計画性が高く進めやすい経産婦のみを対象にしているケースも見られます。
初産婦が無痛分娩を希望する際は、計画出産が必ずしも予定通りにいかない可能性を理解しておくことが大切です。
無痛分娩ができないケース
無痛分娩は多くの妊婦さんに選択される出産方法ですが、すべての方が必ず受けられるわけではありません。
分娩の進み方や体質、持病の有無などによって、安全に実施できないケースがあるためです。
具体的には以下のようなケースが挙げられます。
- 出産の進みが早い
- 麻酔薬でアレルギー反応を起こしたことがある
- 血液が固まりにくい
- 心臓病・血液病・神経系の病気がある
- ヘルニア手術や腰椎骨折の経験がある
- 肥満傾向
- 麻酔をする部分に膿や発熱がある
ここでは上記のケースについてそれぞれ解説します。
出産の進みが早い
出産の進行が早い場合、麻酔を行う準備や効果発現の時間が追いつかず、無痛分娩が実施できないことがあります。
無痛分娩で多く使われる硬膜外麻酔は、背中にカテーテルを入れて麻酔薬を注入し、効果が出るまでに10〜15分ほどかかります。
さらに準備や処置の時間も含めると、実際には1時間程度必要になる場合があるのです。
そのため、特に経産婦で出産が短時間で進んでしまう場合には、麻酔を使う前に赤ちゃんが誕生してしまうこともあります。
医師は分娩の進み方を見極めて無痛分娩が可能かどうかを判断しますが、出産が早く進む傾向がある方は無痛分娩ができない可能性があります。
麻酔薬でアレルギー反応を起こしたことがある
過去に麻酔薬でアレルギー反応を経験したことがある方は、無痛分娩を断られるケースがあります。
麻酔薬に対するアレルギーはまれですが、一度発症すると蕁麻疹や呼吸困難、血圧低下といった症状が起こり、母体や胎児の安全に大きな影響を与えるため注意が必要です。
医療機関によっては、アレルギーの程度や反応を確認し、代替薬を使用することで無痛分娩が可能となる場合もあります。
しかし、安全性が優先されるため、リスクが高いと判断されれば無痛分娩は選択できません。
過去に麻酔薬で問題があった方は、必ず妊娠中に医師へ報告し、詳細な検査や説明を受けることが重要です。
血液が固まりにくい
血液が固まりにくい体質を持つ方や、抗血小板薬・抗凝固薬を内服している方は、無痛分娩ができない可能性があります。
無痛分娩では背中に麻酔を注入する処置を行いますが、このとき血が固まりにくいと、注入部分に血の塊や膿ができて神経を圧迫するリスクが生じます。
まれではありますが、重い場合は下半身のしびれや麻痺につながることもあるため、安全性を優先して無痛分娩が選択できない場合があるのです。
上記のようなリスクがあるため、分娩前には血液検査を行い、凝固機能に問題がないかを確認する医療機関が多いです。
持病や服薬がある方は、事前にその旨を主治医へ伝え、より安全な出産方法を検討しましょう。
心臓病・血液病・神経系の病気がある
心臓病や一部の血液病、神経系の病気を持つ方も、無痛分娩ができない場合があります。
例えば出血が止まりにくい病気や強い心疾患を抱えている場合には、麻酔による影響で合併症のリスクがあるためです。
ただし、すべての病気が対象外になるわけではありません。
血液病の中でも種類によっては無痛分娩が可能な場合もあり、心臓病や神経系の病気に関しても、病状や管理状況によって判断が分かれます。
そのため持病がある場合は自己判断せず、妊婦健診や麻酔科外来で事前に医師へ相談し、無痛分娩の可否を確認することが大切です。
ヘルニア手術や腰椎骨折の経験がある
過去に腰椎ヘルニアの手術を受けた方や腰の骨折を経験した方は、無痛分娩が難しい場合があります。
無痛分娩に用いられる硬膜外麻酔は、背骨の隙間にカテーテルを挿入して麻酔薬を注入する方法が一般的です。
しかし、手術によって背骨周辺に金属の固定具が埋め込まれていたり、骨の形が変わっていたりすると、カテーテルを安全に入れられないことがあります。
また、背骨が曲がる側弯症の方も、隙間が見つけにくく処置が困難になるケースがあります。
医師の判断によっては別の方法で対応できる場合もありますが、手術歴・骨折歴がある方は必ず事前に申告しましょう。
肥満傾向
肥満傾向のある方も、無痛分娩ができない可能性があります。
無痛分娩では背骨の突起と突起の間に針を刺して麻酔を行いますが、皮下脂肪が多いと背骨の位置を確認するのが難しくなります。
目視や触診で背骨を探しにくい状況では、針が正確に入らず神経を傷つけるリスクが高まるため、安全面から実施できないと判断されることがあるのです。
特に体重が大きく増えて80kg以上になると処置が難しくなると言われていることもありますが、筋肉量によっても異なるため一概には判断できません。
肥満体型であっても背骨の位置が確認できれば可能な場合もあるため、不安な方は妊婦健診の際に医師へ相談してみましょう。
麻酔をする部分に膿や発熱がある
麻酔を注入する背中の部位に膿がたまっている場合や全身に発熱がある場合も、無痛分娩ができないことがあります。
無痛分娩で使用する硬膜外麻酔は、清潔な空間に針やカテーテルを挿入して行います。
しかし、注射部位に感染がある状態で処置を行うと、菌が硬膜外腔や脊髄周囲に入り込み、髄膜炎などの重い感染症を引き起こすリスクがあるのです。
また、発熱は体内で炎症や感染が進行しているサインであり、この状態で麻酔を行うのも危険です。
そのため、感染や発熱があるときは無痛分娩は避ける必要があります。
初産で無痛分娩を行うメリット
初産で無痛分娩を行うメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- リラックスしてお産を迎えられる
- 出産のときの負担を軽減できる
- 赤ちゃんにかかる負担を軽減できる
- 血圧の上昇を抑えられる
ここでは上記4つのメリットについてそれぞれ解説します。
リラックスしてお産を迎えられる
初産婦は「出産がどのくらい痛いのか」という不安を抱きやすい傾向があります。
無痛分娩では麻酔によって痛みを大きく緩和できるため、恐怖心や緊張をやわらげ、落ち着いた気持ちでお産に臨むことが可能です。
無痛分娩は、妊娠中から痛みに対する恐怖を抱えている方に特におすすめの選択肢といえるでしょう。
出産のときの負担を軽減できる
初産婦は分娩時間が平均で15時間ほどかかるとされ、体力の消耗が大きな課題になります。
しかし無痛分娩を選択すると、痛みによるストレスや過剰な体力消耗を抑えることができ、分娩中も比較的落ち着いた状態を保ちやすくなります。
特に長時間の陣痛に耐える必要がある場合、無痛分娩によって体力を温存できる点は大きなメリットです。
その結果、出産直後から赤ちゃんを抱っこしたり授乳したりする余裕が持ちやすくなります。
産後の回復にもつながるため、初めての育児をスムーズに始められる点もメリットです。
痛みを和らげながら安全に出産を進められるのは、初産婦にとって非常に心強い要素といえるでしょう。
赤ちゃんにかかる負担を軽減できる
出産の際、陣痛やいきみによって一時的に赤ちゃんへの酸素供給が不安定になることがあります。
しかし無痛分娩を行うと母体の緊張や強いいきみを和らげることができ、結果として赤ちゃんへの酸素や栄養の供給が安定し、出産時のストレスを軽減する効果が期待されます。
母体がリラックスできることで呼吸も整い、十分な酸素を赤ちゃんへ届けやすくなる点が大きなメリットです。
母体だけでなく赤ちゃんにとっても、無痛分娩はより安全性を高める選択肢の一つといえるでしょう。
血圧の上昇を抑えられる
出産時の強い痛みや緊張は、いきみとともに血圧を上昇させる原因となります。
特に妊娠高血圧症候群や高血圧の既往がある方にとって、急激な血圧上昇は痙攣や脳出血などのリスクを高める要因となり危険です。
無痛分娩では、痛みを和らげることで血圧の過度な上昇を防ぐ効果が期待できます。
その結果、母体への負担を減らし、胎児への血流を安定させることにもつながります。
血圧コントロールが難しい方にとっては、安全に出産を進めるための有効な手段といえるでしょう。
無痛分娩に関するよくある質問
無痛分娩に関するよくある質問をまとめました。
- 無痛分娩に向いている人は?
- 無痛分娩を選ぶリスクはある?
- 無痛分娩の流れは?
ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。
無痛分娩に向いている人は?
無痛分娩に向いているのは以下のような人です。
- 出産への不安が強い人
- パニック障害や心疾患を抱えている人
- もともと血圧が高い人や血圧管理が必要な病気の人
- 体力面に不安がある人
無痛分娩は、出産への不安が強い方や強い陣痛に耐える自信がない方に向いています。
特に、パニック障害や心疾患を抱えている妊婦さんは、痛みによるストレスで症状が悪化する可能性があるため、無痛分娩を検討する価値があるでしょう。
また、妊娠高血圧症候群などで血圧管理が必要な方も、痛みを抑えることで血圧上昇を防げるため適しているといえます。
さらに体力面に不安がある人も、痛みを和らげることで出産後の回復がスムーズになるメリットが得られます。
無痛分娩を選ぶリスクはある?
無痛分娩は多くのメリットがある一方で、リスクがゼロではないことも理解しておく必要があります。
無痛分娩を選ぶことで起こり得るリスクは以下の通りです。
- 十分に痛みを抑えられない場合がある
- 分娩時間が長引きやすい
- 後遺障害が出る可能性がある
- 麻酔投与時に事故が起こるリスクがある
無痛分娩で使用される麻酔の効き方には個人差があり、十分に痛みを抑えられないこともあります。
また、分娩時間が長引きやすく、吸引分娩や鉗子分娩が必要になるケースも見られます。
さらに、過去には麻酔薬の誤投与による医療事故も発生しているため、医師が適切な知識と経験を持っているかどうかも重要です。
ただし事前に検査や説明を受け、安全管理を徹底している医療機関を選べば、過度に恐れる必要はありません。
無痛分娩の流れは?
無痛分娩の基本的な流れは以下の通りです。
- 入院日の決定
- 入院
- 分娩前日に必要な処置を行う
- 背中にカテーテルを挿入し麻酔薬を注入する
- 陣痛促進剤を使用して陣痛を促す
- 出産
- 出産後にカテーテルを抜く
- 1~2時間ほど安静に過ごす
無痛分娩は基本的に計画的に進められることが多く、入院日を決めてから準備を行います。
流れや処置の内容は母子の状態に合わせて調整されるため、不安な方は事前に医師と相談して確認しておくことが大切です。
まとめ
無痛分娩は初産婦でも受けられる方法ですが、すべてのケースで実施できるわけではありません。
分娩の進行が予測通りに進まなかったり、体の状態や持病の有無によっては制限されることもあります。
そのため、初産婦で無痛分娩を希望する場合は事前に医師とよく相談し、実施可能かどうかを確認することが大切です。
関谷レディースクリニックでは、無痛分娩による出産が可能です。
一人ひとりに合わせたベストなタイミングでの無痛分娩を提案しているため、出産方法でお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。



